【避難所の生活環境】食事、トレイ、ペット、高齢者や乳幼児の避難生活、災害関連死などについて解説

防災対策全般
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夫

大地震などが発生した後の避難所生活ってどんな感じなのかな?環境が良くないって話も聞くけど。。。

妻

避難所で亡くなる人もいるという話も聞いたことがある。避難所の食事やトイレってどんな感じかな?

この記事ではそういった疑問に答えます。具体的には、この記事を読むことで以下がわかります。

  • 避難所とは何か
  • 避難所の生活環境(過去の災害での事例、食事、トイレ、ペットなど
  • 災害関連死の実態
  • 避難生活を送るにあたり今できるコト

避難所とは何か

出典:熊本地震を踏まえた応急対策・生活支援策検討ワーキンググループ資料(内閣府)

避難所は、災害で住む家を失った被災者等が一時的に生活を送る場所です。大地震が発生した時など、学校の体育館などで被災者が避難生活を送っている映像がテレビなどで報道されるのを見たことがある人もいると思います。

避難所は、災害対策基本法に基づいて市町村が指定します。指定は市町村ですが、避難所の運営は基本的に被災者自身が行うことになります。内閣府のマニュアルには以下の通り記載されています。

避難所は、被災者が一定期間生活を送る場所であるため、避難所を運営するための体制の確立が必要です。原則的には、「被災者自らが行動し、助け合いながら避難所を運営する」ことが求められます。

引用:避難所運営ガイドライン(内閣府)

え?避難所は市町村が運営してくれると思っていた。

そう思っていた人も多いと思います。避難所は民間の宿泊施設とは違いますので、厳しい言い方をしますと避難者はお客様ではありません。避難所生活で不満があった場合には、自分自身で変えていくしかありません。自分自身が運営者だという認識を持ち、平時から避難所の運営について、地域の自治会、自主防災組織等と考えておくことが重要です。

なお、よく混同しがちですが、避難所と避難場所は全く違うものです。この違いについては以下の記事でまとめていますので、もしご存じなければ以下の記事も併せてご覧ください。

避難所の生活環境

過去の災害での事例

避難所の生活環境は必ずしも良いものではありません。過去の災害でも、避難所の生活環境が確保されていないことが度々問題になりました。そのため、まずは過去の災害を振り返りたいと思います。ここでは、平成27年9月関東・東北豪雨と、平成28年4月熊本地震の2つの事例を紹介します。

平成27年9月関東・東北豪雨

平成27年9月関東・東北豪雨では、鬼怒川の堤防が決壊し、茨城県常総市などが甚大な被害を受けました。これにより、常総市では39か所の避難所が開設され、6,223人の避難者が避難所で過ごしました。この時に課題として挙げられたことを紹介します(内閣府検討会より引用)。

避難所の生活環境に関する課題
  • 発災後2週間経っても、食事がおにぎり、菓子パン、不定期な炊き出しのみであった。
  • 停電・断水し、汚物処理に困った。仮設トイレは水に浮いてしまい使えなかった。車でのアクセスが可能となってからは、給水車で水を確保し、バケツで水を流してトイレの対応をした。
  • 学校を避難所として使用する場合が多いため、避難所運営において学校教員に過度の負担がかかっている場合がある。

食事の課題トイレの課題があったことがわかります。

平成28年4月熊本地震

平成28年4月に発生した熊本地震では、震度7の揺れに2度見舞われることで、建物崩壊などにより甚大な被害が発生しました。熊本県では、855か所の避難所が開設され、183,882人の避難者が避難所で過ごしました。避難所が全て閉鎖されたのは11月に入ってからで、7カ月間避難所が開設されていました。この時に課題として挙げられたことを紹介します(内閣府検討会より引用)

避難所の生活環境に関する課題
  • 極度の過密な状態が生じ、高齢者や女性、子育て世代等への配慮が困難だった。
  • 一般避難者が福祉避難所に避難しており要配慮者を収容できない
  • トレイ等の衛生管理、感染症が発生した場合の分離スペースの確保が困難だった。
  • ペット同行避難者に対し、全ての避難所で十分な対応を行うことは困難だった。
  • ボランティア活動における炊き出し等において、基礎的な衛⽣管理が不⼗分な場合があった。

熊本地震では183,882人と極めて多くの避難者が避難所に押し寄せたため、大きな混乱が生じました。それにより、要配慮者への配慮ができなかったこと、トイレやペット、炊き出しの環境整備について課題がありました。

避難所の食事

避難所の食事は栄養面、衛生面が問題となることがあります。例えば平成27年9月関東・東北豪雨では、発災から2週間経っても、食事がおにぎり、菓子パン、不定期な炊き出しのみでした。これでは十分な栄養を取ることはできません。また、2016年熊本地震では、炊き出しの時に基礎的な衛生管理が不十分な場合がありました。

また、発災後72時間(3日間)は行政は救助・救命に全力を注ぎます。そのため、この3日間は特に、避難所に避難をしても食料や飲料が十分に確保できないことも想定されます。この様な事態にならないためにも、平時から個人個人で備蓄をしておくようにしましょう。備蓄に必要な日数は基本的に最低3日間、理想的には1週間以上確保しておきましょう。備蓄の日数について、詳しくは以下の記事で解説していますので、こちらも併せてご覧ください。

避難所のトイレ

避難所で大きな問題となるのがトイレです。災害により水洗トイレが使用できなくなると、排泄物の処理が滞ります。それにより、排泄物の細菌により、感染症や害虫の発生が引き起こされます。また、トレイが不衛生であることにより不快に思う避難者が増え、トイレの使用がためらわれることで健康被害が生じるおそれもあります。この他、トレイの設置場所が暗い、和式トレイである、段差があるなどの問題で、高齢者や障碍者、女性や子供にとって使用がためらわれた事例が過去にありました。2016年の熊本地震においても、避難所のトレイの衛星環境について問題となりました。

また、東日本大震災では、仮設トイレが来ないという問題も生じました。仮設トイレが避難所に行きわたるまで、1か月以上の期間を要した事例もありました。

出典:避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン(内閣府)

スペース・プライバシーの確保

避難所は狭い場所で多くの人が避難生活を送るため、1人あたりのスペースは非常に狭くなります。例えば、内閣府の検討会では、避難所の一人当たりの避難スペースは3.3㎡と想定されています。これが現実ですので、基本的には寝るスペースしか確保できない、という認識を持たなければいけません。実際に熊本地震でも、極度の過密状態となり、スペースの確保は非常に大きな問題となりました。

避難所でのペット

避難所での飼育事例(出典:災害時におけるペットの救護対策ガイドライン(環境省))

災害時、飼い主はペットと同行避難することが原則です。一方で、熊本地震では、ペット同伴者への十分な対応ができない避難所もありました。避難者の中には、動物が苦手な人、動物に対するアレルギーがある人がいます。また、ペットの鳴き声や毛の飛散、臭いへの配慮も必要になります。また、東日本大震災でも、以下の通り避難所でのペットは課題となりました。

東日本大震災に伴う自治体へのアンケート調査結果によると、避難所でのペットのトラブルでは、犬の鳴き声や臭いなどの苦情が最も多かった。その他、「避難所で犬が放し飼いにされ、寝ている避難者の周りを動き回っていた」、「ペットによる子供への危害が心配」、「ノミが発生した」など、飼い主による適正な飼育が行われていないことによるトラブルが多く見られた。 

また、「アレルギー体質の方がいることから、避難所内で人と同じスペースで飼育することが難しい状況があった」など健康への影響についての報告があるほか、「他の避難者とのバランスを考慮して貰えず、自分のペットへの過度の要望を通そうとする避難者がいた」など、飼育マナーに関する意見も各地で報告されている。

東日本大震災での事例(引用:災害時におけるペットの救護対策ガイドライン(環境省))

このような事態にならないためにも、ペット同伴で避難所へ避難する場合は、必ず平時からルールを検討しておく必要があります。ルール作りに積極的に参加するようにしましょう。

高齢者や障碍者、乳幼児等への配慮

高齢者や障碍者、乳幼児など、特に配慮が必要となる人(要配慮者)には、”福祉避難所”が開設されます。福祉避難所は、要配慮者が避難生活を送る上で良好な生活環境を確保するための必要な施設整備を行政が行うことになっており、具体的には、「段差の解消、スロープの設置、手すりや誘導装置の設置、障害者用トイレの設置など施設のバリアフリー化、 通風・換気の確保、冷暖房設備の整備、非常用発電機の整備、情報関連機器その他必要と考えられる施設整備」などが挙げられます。

出典:福祉避難所の確保・運営ガイドライン(内閣府)

一方で、近年の災害においても、福祉避難所の確保が進まないことが課題となっています。また、熊本地震では、一般避難者が福祉避難所に避難しており要配慮者が避難できないことや、施設自体の被災等により福祉避難所が開設できないことも課題となりました。要配慮者であっても、実態としては良好な環境で避難生活を送ることができるわけではありません

災害関連死の実態

上で紹介したように、避難所生活は生活環境が良いとは言えず、それによるストレス等が原因で亡くなる方がいます。いわゆる、災害関連死です。

災害関連死とは、地震により建物倒壊等で亡くなることではなく、避難生活等が原因で亡くなることを言います。参考に、内閣府の定義を以下に記載します。

【災害関連死の定義】

当該災害による負傷の悪化又は避難生活等における身体的負担による疾病により死亡し、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和 48 年法律第 82 号)に基づき災害が原因で死亡したものと認められたもの(実際には災害弔慰金が支給されていないものも含めるが、当該災害が原因で所在が不明なものは除く。)

引用:内閣府ホームページより

実際に、東日本大震災では1,263人が災害関連死でなくなっています。内訳としては、男性が602人、女性が650人、不明が11人となっています。また、熊本地震では218人が災害関連死でなくなっています。内訳としては、男性が115人、女性が103人となっています。

普段と違う環境で生活をすると、人は必ずストレスが溜まります。そのストレスを減らすためには、平時から対策を考えておくことが重要です。次の章では、避難生活を送るにあたり今できることを紹介します。

避難生活を送るにあたり今できるコト

これまで紹介した通り、避難所の生活環境は決して良いものではありません。そのため、避難生活をイメージして、事前の備えをしっかりとしておくことが重要です。

避難所以外の避難先に自主的に避難することを検討する

生活の質を落とさないために最もオススメなのが、自分で避難先を確保することです。被災時に避難所に避難することはマストではありません。例えば被災地から遠く離れた親戚の家や友人の家、ホテルなどの民間の宿泊施設などに避難することができれば、生活の質を落とすことなく避難生活を送ることができます。

また、もし自宅が地震などにより損傷していなければ、自宅で避難生活を送ることも考えられます。これによりプライバシーは守られます。一方で、物資や炊き出しなどの支援が届きにくいという課題があることは事前に認識しておく必要があります。

熊本地震では、在宅避難の他、車中泊やテント泊により避難生活を送る人も多くいました。これらはプライバシーが確保できる一方、エコノミークラス症候群や安否確認の難しさなどが課題となります。

出典:熊本地震を踏まえた応急対策・生活支援策検討ワーキンググループ資料(内閣府)

避難所の運営を平時から考えておく

自分で避難先を確保することが難しい場合は、避難所で避難生活を送ることになりますが、平時から市町村や自主防災組織、NPOなどと連携して避難所の運営方法を検討しておくことが重要です。運営体制や避難所のルールについて、話し合いをすすめましょう。

出典:避難所運営ガイドライン(内閣府)

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