【水害ハザードマップの読み方】リスクの把握方法、浸水深は地盤面から?想定最大規模降雨とは?

風水害対策
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水害ハザードマップで浸水する場所を把握したいと思ってるけど、読み方がよくわからない。浸水深は地盤面からの高さなの?

そもそも、どんな前提で浸水範囲を出しているの?聞きたいことが沢山あるけど、誰に聞けば良いのかわからない。

この記事ではそんな疑問に答えます。

ハザードマップ(防災情報マップ、災害避難地図)には、地震ハザードマップや火山ハザードマップ、水害ハザードマップなど、いくつかの種類があります。その中で、この記事では水害ハザードマップの概要や読み方を解説するとともに、水害ハザードマップに関するよくある質問について回答します。

この記事を読むことで、以下を知ることができます。

  • 水害ハザードマップの概要
  • 水害ハザードマップの読み方(水害リスクの把握方法)
  • 水害ハザードマップについてよくある質問

水害ハザードマップの概要

水害ハザードマップの例(出典:東京都大田区のホームページ)

「水害」とは、洪水や内水、高潮、津波を指します。そのため、「水害ハザードマップ」は、「洪水ハザードマップ」「内水ハザードマップ」「高潮ハザードマップ」「津波ハザードマップ」をまとめたものです。

これは「水防法」と「津波防災地域づくりに関する法律」に基づいて市町村が作成・公開しており、住民の避難に使われることを想定しています。参考に、以下に水防法の根拠条文を記載します。

浸水想定区域をその区域に含む市町村の長は、国土交通省令で定めるところにより、市町村地域防災計画において定められた第一項各号に掲げる事項を住民、滞在者その他の者に周知させるため、これらの事項を記載した印刷物の配布その他の必要な措置を講じなければならない。

水防法第15条第3項

水害ハザードマップは、基本的に「地図面」「情報・学習編」で構成されています。

出典:水害ハザードマップ作成の手引き(国土交通省)

地図面は、洪水や内水、高潮、津波それぞれの浸水が想定される区域などが記載されています。具体的には、浸水深や浸水継続時間、氾濫流により家屋が倒壊する恐れのある範囲などが記載されます。また、避難場所や避難経路も記載されます。

情報・学習編には、地域における水害特性や水害発生メカニズム、水害時に得られる情報や避難情
報等の解説等が記載されます。

水害ハザードマップの読み方(水害リスクの把握方法)

具体的に水害ハザードマップの読み方を解説します。ここでは具体例として、山梨県甲府市のハザードマップを使って見ていきます。下図が甲府市のハザードマップです。記載してある全ての情報が大事な情報ですが、特に重要な「①凡例」「②避難行動」「③浸水継続時間」について解説します。

出典:山梨県甲府市洪水ハザードマップ

①凡例

出典:山梨県甲府市洪水ハザードマップ

まずは凡例を見てみましょう。最初に見るのは上図の左上にある「最大浸水深」です。これがその場所の浸水深を示しています。お住いの家の高さ以上の浸水深が想定されている場合は、必ず立退き避難をするようにしましょう。

その下にある「家屋流失のおそれがある区域」は、河川の堤防が決壊した時に氾濫流の勢いで家屋が流失してしまう恐れのある区域を示しています。この区域にお住いの方は、必ず立退き避難を行うようにしましょう。

その下に記載されている「土砂災害特別警戒区域」「土砂災害警戒区域」は、土砂災害の恐れのある区域を示しています。土砂災害は突発性が高く、かつ人的被害が出やすい災害です。この区域内にお住いの方は、早め早めに立退き避難をするようにしましょう。

さらにその下に、「指定避難所」「洪水浸水想定区域外の避難地(いわゆる避難場所)」があります。緊急的に避難するのは避難場所になりますので、まずは避難場所の位置を確認しましょう。避難所と避難場所の違いは以下の記事で解説していますので、認識のない人はこちらの記事も併せてご確認下さい。

②避難行動

出典:山梨県甲府市洪水ハザードマップ

次に避難行動を見てみます。ここでは、避難を開始するタイミングが記載されています。「避難情報」「市民の皆さんのとるべき行動」の欄がありますので、市町村から避難情報が出されたタイミングでとるべき避難行動を事前に確認しておきましょう。

③浸水継続時間

出典:山梨県甲府市洪水ハザードマップ

最後に、浸水継続時間を確認します。ここでは、オレンジ色に塗られている区域は、河川が氾濫した時に3日以上1週間未満は浸水が継続することを示しています。もし避難が間に合わず自宅などに留まることになった場合は、1週間程度は浸水した状態となってしまいます。その間、外に出ることはできませんし、ライフラインも停止します。それでも生きられるよう、1週間以上の備蓄を行うようにしましょう。

水害ハザードマップに関するよくある質問

以下では、水害ハザードマップに関するよくある質問について回答します。

水害ハザードマップは誰が作成している?

水害ハザードマップは、「水防法」と「津波防災地域づくりに関する法律」に基づいて市町村が作成します。一方で、ハザードマップに記載されている浸水想定区域(浸水深や浸水継続時間)は、各管理者が作成します。例えば、国管理河川の洪水浸水想定区域は国土交通省が作成します。都道府県管理河川の洪水浸水想定区域や津波浸水想定区域、高潮浸水想定区域は都道府県が作成します。また、内水浸水想定区域は市町村が作成します。市町村は、国・都道府県・市町村作成した各浸水想定区域を集約し、そこに避難場所や避難経路などの情報を付加して、水害ハザードマップとして公開します。

出典:水害ハザードマップ作成の手引き(国土交通省)

浸水想定区域はどうやって決めているの?想定最大規模降雨とは?

浸水想定区域は、水防法等に基づき、想定最大規模の水害の浸水想定を公開することとされています。参考に、以下に洪水浸水想定区域に関する水防法の条文を記載します。

国土交通大臣は、次に掲げる河川について、洪水時の円滑かつ迅速な避難を確保し、又は浸水を防止することにより、水災による被害の軽減を図るため、国土交通省令で定めるところにより、想定最大規模降雨(想定し得る最大規模の降雨であつて国土交通大臣が定める基準に該当するものをいう。以下同じ。)により当該河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域を洪水浸水想定区域として指定するものとする。

水防法第14条第1項

「想定最大規模」の降雨規模とは、1,000年に1 回程度を想定しています。1000 年毎に1回発生する周期的な降雨ではなく、1年の間に発生する確率が 1/1000(0.1%)以下の降雨です。詳細は以下の通りです。

降雨波形は、最悪の事態を想定するため氾濫した際の被害が最大となるよう選定するものとし、河川整備基本方針(基本高水)を検討する際に用いた複数の降雨波形や最近の主要な洪水の降雨波形等を、想定最大規模の降雨量に等しくなるよう引き伸ばしを行い、それぞれの降雨波形による流出計算を実施し、任意の想定破堤点から氾濫した際の被害が最大となると考えられる降雨波形から選定することを基本とする

引用:洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第 4 版)(国土交通省)

水害ハザードマップに記載されている浸水深はどこからの高さ?

予想される浸水深は、各地点のおおよその地面の高さ(地盤高)からの浸水の深さを表しています。地盤高の基準については、東京湾平均海面(T.P.)を基準にしています。浸水想定区域は基本的には5mメッシュで公開されており、以下の図のように地盤高メッシュを用いて地盤高からの浸水深さを算出しています。

浸水深設定の例(出典:洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第 4 版)(国土交通省))

浸水が想定されていない場所は浸水リスクがないの?

例えば洪水であれば、比較的規模の大きい河川(洪水予報河川及び水位周知河川)であれば浸水想定区域が公開されていますが、小規模河川は浸水想定区域が公開されていないことがあります。そのため、浸水想定区域外でも浸水のリスクはある可能性は十分あります。

例えば、令和元年東日本台風等による豪雨では、小規模河川での氾濫被害が多数発生しました。このような小規模河川では、浸水想定区域が公開されていなかったため、水害リスク情報の空白地帯となっており、住民が水害リスクが無いと誤解したおそれがあるという課題が明らかになりました。

令和2年6月には、国土交通省が「小規模河川の氾濫推定図作成の手引き」を作成し、小規模河川の浸水想定区域の作成・公開を順次進めているところです。

出典:中小河川の水害リスク評価に関する技術検討会(国土交通省)

隣接した場所と地盤高に差がないのに、浸水深が数メートル異なるのはなぜ?

浸水想定区域の浸水深は、計算で使用する地盤高データに一定程度の誤差が含まれます。また、浸水解析にも誤差が含まれます。そういった誤差が累積することで、地盤高に差が無くても隣接した場所でも浸水深が異なる場合があります。

河川の左岸側と右岸側の両方が浸水する予想になっているのはなぜ?

洪水浸水想定区域の作成に当たっては、右岸と左岸の両方に対して一定間隔で堤防の破堤点を設けて、破堤点毎に氾濫シミュレーションを行っています。そして、最終的には破堤点毎の浸水想定区域を重ね合わせて、その河川の浸水想定区域として公開しています。重ね合わせた際、浸水想定区域が重なる場合は、予想される浸水深の大きい方の浸水深を表示しています。

最後に

この記事では、水害ハザードマップの概要を解説するとともに、水害ハザードマップに関するよくある質問に対する回答を記載しました。この記事を読むことで、水害ハザードマップのことをより深く理解していただければ幸いです。

もしこの他に、水害ハザードマップに関しての疑問点等がありましたら、以下のお問い合わせからご質問を頂ければと思います。なお、個別の地域の水害リスクに関するお問い合わせについてはお答えできかねますので、あらかじめご了承ください。

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