突然ですが、避難所と避難場所の違いを知っていますか?
避難所?避難場所?
テレビなどでよく聞くのは避難所だけど、、、違いがよくわらないなぁ。
例えば、河川が氾濫しそうで、市町村から避難指示が発令されたときに避難するのは避難所でしょうか?それとも避難場所でしょうか?
この質問に「避難所」だと思った人は、必ずこの記事を読んで下さい。これを誤解していると、災害で本当に被災してしまう可能性があります。
この記事では、避難所と避難場所は似て非なるものだということを解説します。
- 避難場所と避難所の違いとは
- 避難所に避難すると被災するリスクがある理由
- 避難場所と避難所が分けられた理由
- 避難場所と避難所の実態
避難場所と避難所の違いとは
まずは避難場所と避難所の違いを簡単に説明します。
- 「避難場所」:被災しないために逃げ込む場所
- 「避難所」:避難生活を送る場所
例えば、河川が氾濫しそうになり、市町村から避難指示が発令された場合を想定します。この場合、まずは河川氾濫により被災しないために、緊急的に逃げなければいけません。この場合は、「避難場所」に避難をします。
その後、実際に河川が氾濫し、自宅が被災して自宅に戻れなくなったとします。その場合は避難生活を送らなければいけません。この時に使うのが「避難所」です。つまり、避難場所から避難所に場所を移動するのです。
日本語だと言葉も似ていてわかりにくいですが、英語だと避難場所は”Evacuation(エバキュエーション)”、避難所は”Sheltering(シェルタリング)”となり、日本語よりは違いがイメージしやすいと思います。避難場所と避難所の違いについて、概念は理解できましたでしょうか。続いては、避難場所と避難所について、もう少し詳しく解説をします。
避難場所とは
避難場所の特徴について解説します。
避難場所は前述の通り、被災しないために緊急的に逃げ込む場所です。そのため、緊急時にいつでも逃げ込める状態になっていなければなりません。逆に言うと、緊急時に鍵がかかっていて逃げ込めないような建物は避難場所にはなりません。
また、避難場所は被災する場所にあってはいけません。河川氾濫時には氾濫に巻き込まれる場所は洪水の避難場所にはなりません。土砂災害発生時に土石流に巻き込まれる建物は土砂災害の避難場所にはなりません。一方で、崖の近くにはあるけど、河川から離れた高台にある建物は、土砂災害の避難場所にはなりませんが、洪水の避難場所にはなります。なぜなら、洪水により被災することは無いからです。
そのため、避難場所は災害種別毎に指定されています。洪水のための避難場所、土砂災害のための避難場所、津波のための避難場所、高潮のための避難場所という具合です。一方で、例えば、洪水も土砂災害も被災しない建物は、洪水と土砂災害どちらも兼ねた避難場所となります。
避難場所は基本的に市町村が指定していて、ハザードマップに避難場所が記載されていますので、まずはハザードマップをご確認下さい。よく見ると、洪水ハザードマップと土砂災害ハザードマップで避難場所が異なっていたりします。これは、上で解説した通り、避難場所は災害種別毎に指定されるからです。
- 避難場所とは、被災しないために逃げ込む場所のこと。
- 緊急時にいつでも逃げ込める状態になっている。
- 災害種別毎に指定される
- 市町村が指定して、ハザードマップ等に記載されている。
避難所とは
被災しないために緊急的に逃げ込む場所が避難場所なのに対して、避難所は、災害で住む家を失った被災者等が一時的に生活を送る場所です。
例えば大きな地震が発生した後、学校の体育館などに多くの方が避難している姿を覚えている人もいると思います。これが避難所です。避難所は生活を送る場所ですので、炊き出しをしたり、寝泊りしたりする場所です。
ここで重要なポイントが1点あります。それは、避難所は被災する可能性があるということです。避難所は、災害が発生した後に、結果として被災しなかった場所が避難所として開設されます。
例えば、河川の右岸で氾濫が発生し、左岸側が被災しなかった場合を想定します。この場合、左岸側の避難所は被災していないので、避難所として開設して被災者を受け入れることができます。逆に、右岸側の避難所は被災してしまったため、避難所としての開設はできません。つまり、避難所は被災リスクのある場所も含めて事前に市町村が指定しておき、災害が発生した後に結果として被災しなかった場所が避難所として開設されることになります。
つまり、もし河川氾濫のリスクが高まり、市町村から避難指示が発令された時に、避難場所ではなく避難所に逃げ込んでしまうと被災リスクがあるということになります。
- 災害で住む家を失った被災者等が一時的に生活を送る場所(緊急時に逃げ込むん場所ではない)
- 災害が発生した後に、結果として被災しなかった場所が避難所として開設される
避難場所と避難所が分けられた経緯
避難場所と避難所は、平成25年の災害対策基本法の改正により明確に定義づけされました。それ以前には避難場所と避難所の定義が明確ではなく、緊急的に逃げる場所も、避難生活を送る場所もどちらも「避難所」と呼ぶことが多くありました。その結果、最寄りの避難所に避難した結果、被災する事例がありました。
そういったことを踏まえて、法律が改正され、避難場所と避難所を市町村が指定することができるようになりました。正確には、市町村が指定した避難場所を指定緊急避難場所、避難所を指定避難所と呼びます。
ちなみに、避難場所と避難所は別々の概念の場所ですが、市町村が兼ねて指定することもできます。例えば、被災リスクのない常時解放している場所であれば、避難場所としても避難所としても使えるので、どちらも兼ねて指定することができます。実態としては、兼ねて指定している事例が多く見られます。
避難場所と避難所の実態
避難場所と避難所の違いを理解しておくことはとても重要です。間違った認識をしていて、緊急的に避難所に逃げてしまうと、被災するリスクもあるからです。
一方で、避難場所と避難所の違いを理解している人は極めて少数だと思います。実を言うと、テレビ番組などのマスコミも正しく理解していないことが多く、誤った報道をしていることはよくあります。私が内閣府(防災担当)で働いていた時は、ほとんどの記者はこの違いを理解しておらず、また、その違いを説明しても興味を示すことはありませんでした。そして、ニュースキャスターが「避難指示が発表されています。避難所へ避難してください」と誤った情報を流し続けているのを見ていました。そしていまだにその状況は改善されているようには感じません。
繰り返し言いますが、避難場所と避難所を間違えると、命を失うことがあります。例えば、平成26年に広島県広島市で発生した土砂災害では、⼟砂災害に適さない”避難所”に⾃主避難した住⺠ 1 名が被災し亡くなっています。
この様なことが二度と起こらないよう、是非、避難場所と避難所の違いを正確に理解していただき、適切な避難行動に繋げていただければ幸いです。
コメント