東京に住んでるんだけど、東京って大きな災害が起きたらどうなるんだろう。。。?
東京は防災が進んでるし、大きな災害が起きても大丈夫でしょ?
日本は世界的に見ても自然災害が多い国で、日本全国どこに住んでいても自然災害から逃れることはできません。その中でも、首都圏(特に東京)は最も自然災害に対して脆弱な場所であると言えます。なぜなら、東京はあまりにも人口密度が多く、社会システムが高度かつ複雑になりすぎているからです。
例えば震度7の地震が来ても、東京と地方では被害の大きさが全く異なります。東京では多くの建物が倒壊し人的被害が発生しますし、交通機関が停止すれば膨大な数の帰宅難民(帰宅困難者)が発生します。
これは脆弱性の一例であり、地震以外でも脆弱性が明らかとなっています。そういったことを踏まえて、この記事では、首都圏(特に東京)での自然災害に対する脆弱性を解説します。
- 東京で想定されている大規模災害には何があるか
- 東京で大規模災害が発生するとどの様な状況になるか
- 個人でできる災害への備え
首都直下地震のリスク
首都直下地震のリスク
日本は全国どこでも大地震のリスクがあり、東京も例外ではありません。東京では遠くないうちに首都直下地震が発生すると言われており、文部科学省の推定(2004年)では、南関東地域でM7クラスの地震が発生する確率は30年間で70パーセントとされています。
過去を振り返ると、東京では1923年に関東大震災が発生しています。この地震のマグニチュードは7.9と推定されており、近代化した首都圏を襲った唯一の巨大地震です。死者105,385人、全潰全焼流出家屋293,387に上り、電気、水道、道路、鉄道等のライフラインにも甚大な被害が発生し、大混乱となりました。1923年当時よりも人口が多く、社会が高度化・複雑化した現代で同規模の地震が発生した場合は、同じく甚大な被害・混乱を引き起こす可能性があります。
その後はこの規模の地震は発生していませんが、2011年には東日本大震災により震度5強の揺れが観測され、多くの鉄道が運行を停止し、また道路は大渋滞でバスやタクシーも全く動けなくなったことで、多くの人が帰宅することができずに路上に溢れかえりました。この帰宅困難者は、内閣府の推計では首都圏で515万人発生したとされています。今後、さらに規模の大きい首都直下地震が発生すれば、更なる混乱を引き起こす可能性があります。なお、東日本大震災に伴う帰宅困難者については以下の記事で詳細を解説していますので、さらに詳しく知りたいという人はこちらも併せてご覧ください。
首都直下地震による被害予測
内閣府の推計では、首都直下型地震が発生した場合は次の被害が発生するとされています。
- 揺れによる全壊家屋:約175,000棟 建物倒壊による死者:最大 約11,000人
- 揺れによる建物被害に伴う要救助者:最大 約72,000人
- 電力:発災直後は都区部の約5割が停電。供給能力が5割程度に落ち、1週間以上不安定な状況が続く
- 通信:固定電話・携帯電話とも、輻輳のため、9割の通話規制が1日以上継続。メールは遅配が生じる可能性。携帯基地局の非常用電源が切れると停波。
- 上下水道:都区部で約5割が断水。約1割で下水道の使用ができない。
- 交通:地下鉄は1週間、私鉄・在来線は1か月程度、運行停止する可能性。主要路線の道路啓開には、少なくとも1~2日を要し、その後、緊急交通路として使用。都区部の一般道はガレキによる狭小、放置車両等の発生で交通麻痺が発生。
- 港湾:非耐震岸壁では、多くの施設で機能が確保できなくなり、復旧には数か月を要す。
- 燃料:油槽所・製油所において備蓄はあるものの、タンクローリーの確保、深刻な渋滞により、非常用発電用の重油を含め、軽油、ガソリン、灯油とも末端までの供給が困難となる。
- 経済被害:約95兆円(建物等の直接被害:約47兆円、生産・サービス低下の被害:約48兆円)
これらの被害に加えて、地震発生後は公共交通機関が停止するため、大量の帰宅困難者の発生も想定されます。内閣府の推計では、首都直下地震が発生した場合、1都4県で約695万人、そのうち東京都で約415万人の帰宅困難者が発生すると推定されています。東日本大震災後の東京都の混乱を覚えている人も多いと思いますが、首都直下地震では建物被害も甚大になっていることを踏まえると、東日本大震災とは比べ物にならないほど酷い状況になっていると想定されます。国と東京都は、帰宅困難者が道を塞ぐことにより消防等の人命救助に支障をきたすことが無いよう、発災後3日間はその場に留まるよう、都民や企業にお願いをしています。
大規模水害(洪水・高潮氾濫)のリスク
大規模水害のリスク
東京の大規模災害として軽視されがちなのが、大規模水害です。東京都は荒川や利根川、多摩川の氾濫、台風や低気圧に伴う高潮氾濫により大きな被害が出ることが予想されていますが、特に被害が甚大になるのが荒川や利根川の氾濫と高潮氾濫による東京東部低地帯に位置する江東5区(墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区)での浸水被害です。
過去を振り返ると、この地域では1947年にカスリーン台風による洪水災害が発生しています。利根川本川の堤防が決壊し、氾濫水が東京に到達して江戸川、葛飾区の大半が水没し、浸水家屋数は384,743棟、死者数は1,077人、不明者数は853人という大きな被害をもたらしました。1947年と比較して堤防等の設備の整備は進んでいますが、当時よりも人口が多く、社会が高度化・複雑化した現代で同規模の水害が発生した場合は、同じく甚大な被害・混乱を引き起こす可能性があります。なお、江東5区の大規模水害のリスクについては、以下の記事で詳細を解説していますので、さらに知りたいという人はこちらの記事も併せてご覧ください。
大規模水害による被害
東京における大規模水害では甚大な被害の発生が予想されています。例えば利根川の氾濫により浸水した場合、影響人口は約230万人であり、死者は約2,600人、孤立者数は最大で約110万人と推計されています。また、ライフランも大きな被害を受け、広い範囲で停止することが想定されています。
また、リスクとして見落としがちなのは、氾濫による浸水深と浸水が継続する時間です。下の図は江東5区の大規模水害ハザードマップですが、場所によって浸水深は5m以上、浸水が継続する時間は広い範囲で2週間以上となっています。江東5区で浸水により影響を受ける人数は約250万人ですので、2週間以上水が引かない場所に数百万人が取り残された場合、消防や自衛隊による救助が間に合わず、衛生環境の悪化で2次被害が発生する可能性も高くなります。この様な事態を防ぐため、国や東京都、江東5区は事前に遠くの自治体に避難する広域避難の取組を進めていますが、どこまで実効性を保てるかが大きな課題となっています。
富士山噴火による大規模降灰のリスク
富士山噴火によるリスク
東京での大規模災害リスクとして、富士山の噴火による大規模降灰リスクは極めて深刻です。過去を振り返ると、1707年の富士山宝永噴火では、16日間にわたり降灰が継続し、総噴出量約17億m3の火山灰が堆積し、東京にも火山灰が堆積しました。
このように、火山噴火は長期間にわたり継続することが想定され、その間はライフラインや公共交通機関が停止することで経済活動が長期にわたり停止することが想定されます。
富士山噴火による被害
富士山の噴火による被害としては、以下が想定されており、ライフラインや交通は長期にわたり停止することが想定されます。
- 鉄道:微量の降灰で地上路線の運行が停止。大部分が地下の路線でも、地上路線の運行停止による需要増、車両・作業員の不足等により運行停止や輸送力低下。停電エリアでは地上、地下路線ともに運行が停止。
- 道路:視界低下による安全通行困難、道路上の火山灰や交通量増等による速度低下や渋滞。乾燥時10cm以上、降雨時3cm以上の降灰で二輪駆動車が通行不能。
- 物資:少量の降灰でも買い占め等により、店舗の食料、飲料水等の売り切れ。道路の交通支障による物資の配送困難、店舗等の営業困難により、生活物資の入手困難。
- 人の移動:鉄道の運行停止と道路の渋滞による一時滞留者の発生、帰宅・出勤等の移動困難。道路交通支障により、移動手段が徒歩に制限される。
- 電力:降雨時0.3cm以上で碍子の絶縁低下による停電。数cm以上で火力発電所の吸気フィルタの交換頻度の増加等による発電量の低下。電力供給量の低下が著しく、必要な供給力が確保しきれない場合停電に至る。
- 通信:利用者増による輻輳。降雨時に、基地局等の通信アンテナへ火山灰が付着すると通信阻害。停電エリアで非常用発電設備の燃料切れが生じると通信障害。
- 上水道:原水の水質が悪化し、浄水施設の処理能力を超えることで、水道水が飲用不適または断水。停電エリアでは浄水場及び配水施設等が運転停止し、断水。
- 下水道:降雨時、下水管路(雨水)の閉塞により、閉塞上流から雨水があふれる。停電エリアで非常用発電設備の燃料切れが生じると下水道の使用制限。
- 建物:降雨時30cm以上の堆積厚で木造家屋が火山灰の重みで倒壊可能性。
まとめ
首都圏(特に東京)は、一極集中や社会の高度化・複雑化により、災害が発生すると他の地域と比べ物にならないような甚大な被害の発生が懸念されます。
この記事ではその中でも、首都直下地震、大規模水害、富士山噴火による大規模降灰によるリスクや被害を解説してきました。実際にはこれら以外にも、大規模火災によるリスクなど、様々なリスクを抱えています。
その全てに完璧に備えることは不可能ですが、これらのリスクや被害を認識し、個人レベルのことから少しずつ対策を進めていくことが重要です。個人でできる防災対策としては、以下のことが考えられます
- ハザードマップ等により自分が住む場所の災害リスクや被害予測を把握する。
- 避難先や避難のタイミングを把握する。
- 地震に備えて家具等を固定する。
- 浸水に備えて可能な限り浸水対策等を行っておく。
- 安否確認の方法を確認しておく
- 飲料や食料、簡易トイレ、非常用持ち出しバッグなどの備蓄を行っておく 等
この記事を読むことで災害リスクを知り、それを契機として皆様の防災力の向上に繋がれば幸いです。
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