日本では毎年のように豪雨災害が発生してるけど、過去に日本ではどんな豪雨災害があったのかを知りたい。
その疑問に答えるため、この記事では過去に発生した豪雨災害と、そこから得られた主な教訓を紹介します。
令和時代の主な豪雨災害
令和3年7月からの一連の豪雨災害
令和3年6月下旬から7月上旬にかけて、気象庁は鹿児島県、宮城県、熊本県に大雨特別警報を発表するなど、西日本から東北地方の広い範囲で記録的な大雨となり、各地で土砂災害や河川の氾濫、低地の浸水が発生しました。この大雨により、死者26名、行方不明者2名の人的被害が被害が発生しました。
また、令和3年の8月中旬から下旬にかけても前線の活動が活発となり、気象庁は広島県広島市に大雨特別警報を発表するなど、西日本から東日本の広い範囲で大雨となりました。この時にも、各地で土砂災害や河川の氾濫、低地の浸水が発生しました。この大雨により、死者13名の人的被害が発生しました。
この災害で浮き彫りとなった課題・教訓を紹介します。
- 内閣府の調査によると、ハザードマップの内容を「あまり理解していない」あるいは「見たことがない」という回答が5割であり、災害に対する意識が希薄であった。
- 岐阜県の調査によると、避難指示の対象者に対して立退き避難をした人の割合は6%未満であった。
令和元年台風第19号(東日本台風)等による災害
2019年10月に発生した台風19号により、1都12県309市区町村に大雨特別警報が発表され、国や県管理河川で140か所が決壊するなど、広範囲にわたり甚大な被害が発生しました。また、10月24日~26日にかけても発達した低気圧により千葉県や福島県などで河川氾濫、土砂災害などが発生し、これらの豪雨災害による人的被害は死者99名、行方不明者3名の大災害となりました。
この災害で浮き彫りとなった課題・教訓を紹介します。
- 避難しない、避難が遅い人が多かった。
- 屋外で、特に車移動中に被災した人が多かった。
- 仕事の関係で屋外移動中に被災した人がいた。
- 河川氾濫による犠牲者のうち、7割弱が浸水想定区域の範囲内で犠牲となった。
- 土砂災害による犠牲者のうち、4割が土砂災害危険個所の範囲内または範囲の近傍で犠牲となった。
- 多くの在宅高齢者等が被災した(自宅での死者34名のうち、65歳以上の高齢者は27名)。
平成時代の主な豪雨災害
平成30年7月豪雨災害
昭和58年7月豪雨以来、死者数が100名を超え、平成30年11月6日時点で死者数は224名、行方不明者が8名の大災害となりました。気象庁は特別警報を1府10県に発表し、西日本から東海地方を中心に大雨となり、岡山県の高梁川水系小田川などで堤防決壊が相次ぎ、倉敷市真備町では大規模な浸水被害が発生しました。
この災害で浮き彫りとなった課題・教訓を紹介します。
- 実際の被害は、ハザードマップで危険とされていた箇所と概ね一致していた。
- 内閣府によると、真備地区の調査でハザードマップの内容を理解していた人は24%と少数であった。また、洪水の可能性がある低地居住者で、自宅から避難しなかった人は「危険性は低いと思っていたから」と答えている。
- 愛媛県大洲市三善地区などでは、地域の防災リーダーが中心となって避難訓練などを行っていたため、的確に避難が行われた。
- 一方で、この様な地域は限られており、甚大な被害が発生した。
- 内閣府によると、愛媛県、岡山県、広島県の死者のうち、60代以上の割合が約7割いた。
- 高齢者施設等の被災はなく、在宅の高齢者が多く被災した。
- 内閣府によると、避難指示(緊急)、避難勧告、避難準備・高齢者等避難開始の危険度の高さを正しく認識している人は約4割という状況であり、これらの情報が避難に結び付かなかった。
- 避難しなかった理由としては、「これまで災害を経験したことはなかったから」が最多であった。
平成29年7月九州北部豪雨災害
九州北部地方で線状降水帯が形成されたことにより記録的な大雨となり、福岡県朝倉市・東峰村と大分県日田市で死者・行方不明者41名が発生する被害が発生しました。
この災害で浮き彫りとなった課題・教訓を紹介します。
- 避難情報が届いていたにも関わらず避難せずに被災した事例があった。
- 建物内で被災した人が多かった
- 中小河川の浸水想定区域が作成されていない箇所で被災した。
平成28年台⾵第 10 号災害
平成28年台風第10号による水害により、東北・北海道の各地で甚大な被害が発生し、死者・行方不明者27名が発生しました。特に、岩手県岩泉町では、認知症高齢者グループホーム「楽ん楽ん(らんらん)」が被災し、入所者9人全員が亡くなりました。
この災害で浮き彫りとなった課題・教訓を紹介します。
- 岩泉町は避難情報を適切に発表・伝達できていなかった。
- 岩泉町で氾濫した小本川は浸水想定区域が公表されていなかった。
- 被災したふるーぷホームは、水害に関する避難計画を作成していなかった。
平成27年9月関東・東北豪雨災害
関東・東北豪雨により鬼怒川の堤防が決壊するなど、死者・行方不明者14名が発生した。また、氾濫流が堤防決壊地点から10km以上も市街地を流下し、茨城県常総市の大半が浸水した。浸水が概ね解消したのは決壊から10日後という甚大な被害が発生した。
この災害で浮き彫りとなった課題・教訓を紹介します。
- 常総市は避難指示の発令基準等を定めておらず、適切に発令されなかった。
- ハザードマップを認知している住民の割合が非常に低く、災害に警戒した動きがとれていなかった。備蓄も十分でなかった。
- 常総市は大半が浸水したが、常総市は市町村の区域を越えた広域避難を事前に検討しておらず、避難誘導に無理が生じた。
- 常総市は、洪水用の避難場所の指定が完了していなかった。
- 病院などで避難が行われなかった。
- 防災情報の伝達が十分でなく、住民に避難情報等が伝わらなかった。
- 避難所の運営マニュアルがなく、避難所の生活環境が劣悪だった。
平成26年広島土砂災害
広島市内で8月20日の未明から早朝にかけて雨雲が発達し豪雨が発生しました。これにより、広島市で166件の土砂災害が発生し、77名の死者が発生する大災害となりました。これは、単独の水災害としては、昭和58年の島根災害による死者107名以来の人的被害で、単独の市町村で発生した水災害としては、昭和57年に長崎市内で人的被害262名を出した長崎災害以来の人的被害でした。土砂災害は発生してからでは到底逃げられないことが浮き彫りとなった災害でした。
この災害で浮き彫りとなった課題・教訓を紹介します。
- 突発性が高く予測が難しい土砂災害の特徴や、土砂災害リスクを住民が把握できていなかった。これは、土砂災害警戒区域の指定が完了していなかったことも影響している。
- 土砂災害に適さない避難所に避難した住民が被災して亡くなっている。避難所と避難場所の違いを市町村も理解していない。
- 災害発生前に避難指示等が適切に発令された市町村はほとんどなかった。避難場所が開設されていないから避難指示等を発令しなかった市町村もあった。
上記以外の平成時代の主な豪雨災害(死者・行方不明者50人以上)
発生年 | 災害名 | 被災地域 | 死者・行方不明者数 |
平成23年 | 平成23年台風第12号 | 近畿、四国 | 98人 |
平成16年 | 平成16年台風第23号 | 全国 | 98人 |
平成5年 | 平成5年8月豪雨 | 全国 | 79人 |
昭和時代の主な豪雨災害
昭和57年7月長崎豪雨災害
低気圧と梅雨前線がもたらした豪雨は、長崎南部地方に甚大な被害をもたらしました。斜面が多い長崎市では、豪雨は一気に河川や低地に押し寄せ、河川氾濫と土砂災害が同時に多発し、道路も完遂や土砂災害で寸断され、応急対応が困難な状況となりました。この豪雨災害により、死者299名が発生しました。
この災害で浮き彫りとなった課題・教訓を紹介します。
- ハード面だけでなく、避難対策などのソフト面からの防災対策を推進しなければならない。
- 水位上昇が急激な河川は、リアルタイムに住民一人一人に周知することが重要。
- 公助に頼るのではなく、自助・共助が必要。
昭和34年伊勢湾台風高潮災害
伊勢湾台風は昭和34年に和歌山県に上陸したのち、名古屋に接近し、日本海に抜けていった台風で、高潮災害により伊勢湾に広がる低地帯に甚大な被害をもたらしました。東海地方を中心に、中国や四国、北海道の広範囲に渡り、死者数は4,697人、不明者数は401を出す大災害となりました。この災害をきっかけに、日本の防災対策の原点となる「災害対策基本法」が制定されました。
この災害で浮き彫りとなった課題・教訓を紹介します。
- それまで想定していた潮位より1m近く上回る高潮が襲来した。
- 江戸時代以降の開拓によって陸地化された低平地で甚大な被害が発生した。
- 貯木場から流出した流木により被害が拡大した。
昭和22年カスリーン台風洪水災害
昭和22年9月、カスリーン台風は房総半島南部を通過し、東日本各地に大雨を降らせて甚大な被害をもたらしました。利根川の上流域では、豪雨により赤城山を中心に斜面崩壊が多発し、甚大な人的被害が発生しました。また、埼玉県大利根町において、利根川の堤防が決壊し、氾濫流が南下して東京都葛飾区や江戸川区も大部分が水没しました。これにより、死者数は1,077人、不明者数は853人を出す大災害となりました。
この災害で浮き彫りとなった課題・教訓を紹介します。
- もし現代において、利根川や荒川においてカスリーン台風級、あるいはそれ以上の洪水が再び発生した場合等には、極めて甚大な被害が予想されており、大規模水害への備えをしておく必要がある。
上記以外の昭和の主な豪雨災害
発生年 | 災害名 | 被災地域 | 死者・行方不明者 |
昭和58年 | S58.7月豪雨 | 九州~東北 | 死傷者117人 |
昭和57年 | 台風第15号 | 近畿以北 | 死傷者53人 |
昭和57年 | 台風第10号・前 線 | 中国~東北 | 死傷者95人 |
昭和51年 | 台風第17号・前 線 | 全国 | 171人 |
昭和51年 | 台風第5・6号 | 四国~北海道 | 死傷者110人 |
昭和50年 | 台風第8号・前 線 | 沖縄~中部 | 死傷者111人 |
昭和42年 | 羽越豪雨 | 九州北部~関東 | 375人 |
昭和41年 | 台風第25・26号 | 全国(特に山梨) | 死傷者375人 |
昭和40年 | 台風第25号・前 線 | 全国 | 死傷者107人 |
昭和39年 | 台風第20号 | 九州~東北 | 死傷者56人 |
昭和38年 | 大雨(前線) | 九州・東海 | 死傷者102人 |
昭和36年 | 第2室戸台風 | 全国(特に近畿) | 死傷者202人 |
昭和36年 | S36梅雨前線 | 全国(北海道を除 く) | 357人 |
昭和34年 | 台風第7号・前 線 | 近畿~東海(特に 甲信) | 死傷者235人 |
昭和33年 | 狩野川台風 | 近畿以北(特に静 岡) | 1,269人 |
昭和32年 | 諌早水害 | 九州(特に長崎) | 992人 |
昭和29年 | 洞窟丸台風 | 全国 | 1,761人 |
昭和29年 | 台風第12号 | 関東以西 | 156人 |
昭和28年 | 台風第13号 | 全国(特に近畿) | 死傷者578人 |
昭和28年 | 南紀豪雨 | 全国 | 死傷者1,125人 |
昭和28年 | 大雨(前線) | 九州~中国(特に 熊本) | 死者758人 行方不明者265人 |
昭和27年 | 大雨(前線) | 中国~東海 | 死傷者150人 |
昭和26年 | ルース台風 | 全国(特に山口) | 死傷者973人 |
昭和26年 | 大雨(前線) | 中部以西(特に京 都) | 死傷者306人 |
昭和25年 | ジェーン台風 | 四国以北(特に大 阪) | 593人 |
昭和24年 | キティ台風 | 中部~北海道 | 死傷者160人 |
昭和24年 | ジュディス台風 | 九州、四国 | 179人 |
昭和23年 | アイオン台風 | 四国~東北(特に 岩手) | 死傷者838人 |
昭和20年 | 枕崎台風 | 九州~東北 | 3,756人 |
昭和13年 | 阪神大水害 | 阪神地方 | 死者 708人 行方不明者217人 |
昭和9年 | 室戸台風 | 近畿地方 | 3,036人 |
昭和7年 | 中部・関東・東 北地方大水害 | 東海・関東・東 北地方一帯 | 257人 |
昭和2年 | 九州西部・東京 地方風水害 | 九州西部、関東 | 439人 |
昭和以前の主な豪雨災害
発生年 | 災害名 | 被災地域 | 死者・行方不明者 |
大正10年 | 中国・近畿・中 部地方風水害 | 中国・近畿・中 部地方一帯 | 691名(全国) |
大正6年 | 東北~近畿地方 風水害 | 東北から近畿地 方一帯 | 1,300名以上(大阪府) |
大正3年 | 北陸・甲信越・ 関東各地方風水 害 | 北陸・甲信越・ 関東地方一帯 | 115名(富山県) |
明治44年 | 東海・関東・東 北地方の風水害 | 東海・関東・東 北地方一帯 | 44人(神奈川県) 60人(東京都) |
明治43年 | 明治43年関東大 水害 | 中部・関東・東 北地方一帯 | 1,349名 |
明治29年 | 明治29年の大洪 水 | 中部・関東・東 北地方一帯 | 死傷者78人(新潟県) 死者158人(岐阜県) 死者128人(福井県)など |
明治23年 | 関東洪水 | 関東一帯 | |
明治18年 | 淀川大洪水 | 西日本一帯 | 100名(近畿) |
安政3年 | 関東大風災 | 関東一帯 | 多数 |
嘉永3年 | 安芸国大水 | 倉敷周辺 | 多数 |
享和2年 | 淀川大洪水 | 大坂(淀川沿い) | 2,000名以上 |
宝暦7年 | 蔵王 |
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