中古の住宅を購入しようと思ってるんだけど、昔の建物は耐震基準を満たしていない場合があるという話を聞いたことがある。
いつ耐震基準がかわったのかな?昔の耐震基準だとやっぱりダメなのかな?誰か教えてほしい。
この記事ではそんな疑問にお答えします。この記事を読むことで、以下がわかります。
- 旧耐震基準と新耐震基準の違い
- 過去の災害での耐震基準の違いによる損傷度の違い
- 旧耐震基準の建物の耐震化の進め方
旧耐震基準と新耐震基準の違い
耐震基準は大きく分けて旧耐震基準と新耐震基準があります。まずはその違いについて解説します。
旧耐震基準
旧耐震基準は昭和56年(1981年)以前の耐震基準を言います。建築基準法が制定された1950年から1981年にかけて約30年間運用されてきた耐震基準です。
旧耐震基準は中規模の地震(震度5強程度)に対して家屋が損傷しないように建築されています。そのため、震度6や7といった地震に対しては検証がされていません。過去の地震災害において、この旧耐震基準で建築された建物は甚大な被害が発生する確率が高いことから、現在は新耐震基準の建物への建て替えや耐震改修が進められています。
新耐震基準
新耐震基準は昭和56年(1981年)以降の耐震基準を言います。新耐震基準は中規模の地震(震度5強程度)で損傷しないこと、震度6~7で倒壊しないことを求める基準です。
1978年に発生した宮城県沖地震において、建物に甚大な被害が発生したことを踏まえて1981年に建築基準法が改正され、新耐震基準が導入されました。
旧耐震基準と新耐震基準の確認方法
なるほど。じゃあ1981年以降に建てられたものであれば新耐震基準と考えて良いってこと?
これに対する答えは”No”です。旧耐震基準と新耐震の建物を見分ける時は、建築確認申請の確認日で判断します。具体的には以下の通りです。
- 旧耐震基準:1981年5月31日までに建築確認申請の承認を受けた建物
- 新耐震基準:1981年6月1日以降に建築確認申請の承認を受けた建物
建物の完成日ではないことに注意が必要です。例えば、1982年10月に完成した建物であっても、建築申請確認日が1981年1月であれば、その建物は旧耐震の建物になります。
旧耐震基準と新耐震基準の違いまとめ
旧耐震基準と新耐震基準の違いをまとめると下表になります。
旧耐震基準 | 新耐震基準 | 確認方法 | |
中規模の地震(震度5強程度) | 家屋が損傷しない | 家屋が損傷しない | 建築確認申請日が1981/5/31以前 |
大規模の地震(震度6~7) | 規定なし | 家屋が倒壊しない | 建築確認申請日が1981/6/1以降 |
過去の災害での耐震基準の違いによる損傷度の違い
旧耐震基準と新耐震基準について、過去の災害での損傷度を比べると大きな違いがあることがわかっています。ここでは、1995年に発生した阪神・淡路大震災と、2016年に発生した熊本地震での調査結果を紹介します。
1995年阪神・淡路大震災
1995年に発生した阪神・淡路大震災では、最大深度7を記録し、全壊の家屋が104,906戸、半壊の家屋が144,274戸となるなど、甚大な被害を発生させました。
この地震による旧耐震基準と新耐震基準のそれぞれの損傷度は下図の通りです。昭和56年以前の旧耐震基準の建物は大破が30%近くに及んでいるのに対して、新耐震基準では10%程度となっています。また、損傷が軽微・無被害の建物は、旧耐震基準で30%強なのに対して、新耐震基準では70%強となっており、大きな差が出ていることがわかります。この結果から、旧耐震基準と比較して新耐震基準は耐震性能が高いことが明確にわかります。
2016年熊本地震
2016年に発生した熊本地震は、4月14日に震度7の前震が発生し、その後4月17日に再度震度7の本震が発生しました。また本震前後でも複数回にわたり震度6弱の地震が発生するなど、何度も大きな揺れに見舞われたという特徴があります。
この地震による旧耐震基準と新耐震基準のそれぞれの損傷度は下図の通りです。新耐震基準以前の木造の倒壊・崩壊は28.2%、新耐震基準以降2000年改正以前の木造の倒壊・崩壊は8.7%、2000年改正以降の木造の倒壊・崩壊は2.2%でした。この結果から、旧耐震基準と比較して新耐震基準は耐震性能が高いことが明確にわかります。
この結果を踏まえて、国土交通省の委員会の報告書で、以下のように結論付けています。
旧耐震基準の木造建築物については、過去の震災と同様に新耐震基準導入以降の木造建築物と比較して顕著に高い倒壊率であった。旧耐震基準の木造建築物については、耐震化の一層の促進を図ることが必要である。
新耐震基準導入以降の木造建築物では、接合部の仕様等が明確化された2000年以降の倒壊率が低く、接合部の仕様等が現行規定どおりのものは、今回の地震に対する倒壊・崩壊の防止に有効であったと認められる。
出典:熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会(報告書)(国土交通省国土技術政策総合研究所)
旧耐震基準の建物の耐震化の進め方
耐震診断の受け方
これまで示したように、旧耐震基準の家屋は、大地震に対して倒壊・崩落する恐れがあります。
私の家は旧耐震基準で建てられているけど、どうすれば良いの?
最後にこの質問の答えます。旧耐震基準の家屋にお住いの人は、まずは耐震診断を受けて、耐震性能を確認することから始めましょう。
建築士などの専門的な知識をもつ人が、建物の壁の強さやバランスなどを調査して、耐震性能を評価し、それにより耐震改修の要否を判断します。一般的には場合は以下の流れで実施します。
- 予備調査(1~2週間程度)
- 本調査(3~6週間程度)
- 耐震性能の評価(1~3か月程度)
法律に基づいて耐震診断の実施ができるのは「建築士」かつ「国土交通大臣が定める講習を修了した者」と定められています。まずは、お住まいの地方公共団体(都道府県または建築主事が置かれている市区)の担当窓口にお問い合わせをして下さい。
耐震診断の費用
耐震診断の費用は建物の規模や築年数などで変動はありますが、目安としては以下の通りです。
新耐震基準に関する補足~新耐震でも耐震性能は不十分~
最後に、新耐震基準でも耐震性能は不十分だということを解説します。
新耐震基準は中規模の地震で無損傷を目指している一方で、大規模の地震を受けた場合には、多くのヒビが入り、傾くことが許されています。これでは、地震発生後に安心してそれ以前と同じように過ごすことはできません。
建築基準法により最低限の基準しか示すことができない理由としては、日本国憲法の第29条に、「財産権は、これを侵してはならない」と記載されているように、国は私有財産である建物に対して過剰な強さを求めることはできないと言われています。
新耐震基準になったことで、耐震性能は向上しましたが、大規模な地震に対して建物が倒壊しなければ良いという考えだけでは、耐震性能は決して十分とは言えません。たとえ戸建であったとしても、耐震等級の高い建物を選ぶなど、地震に備えることが重要です。
まとめ
この記事では、新耐震基準と旧耐震基準の違いについて解説をしました。
1981年5月31日以前に建築確認申請が承認された場合は旧耐震基準となり、過去の被災事例を見ても、新耐震基準と比べて地震に対する耐力が弱いことが確認されています。
そのため、旧耐震基準の家屋に住んでいる人はまず、お住いの地方公共団体の窓口に相談に行き、耐震診断を行うことをオススメします。
地震による家屋倒壊は人命にかかわります。日本ではどこに住んでいても地震は避けて通れません。可能な限り早めに対策をとることが重要になります。
なお、新耐震基準における耐震等級については以下の記事で紹介していますので、興味のある方はこちらも併せてご覧ください。
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