台風が近づいてきて河川が氾濫しそうになった時に、自分はNHKから情報収集をしているけど、それ以外に良い情報収集の方法はあるの?
テレビから情報を収集するのも否定はしませんが、決して良い手段であるとは言えません。この記事では、テレビをオススメしない理由と、最良の情報収集手段を紹介します。
- 河川の氾濫により避難が求められる時の情報収集手段としてテレビをオススメできない理由。
- 最良の情報収集手段とは何か。
災害時の情報収集手段の実態
読者の皆様は、河川が氾濫しそうで避難しなければいけない状況になりそうな時、何から情報を取得しますか?以下のアンケート調査は、平成27年9月に発生した関東・東北豪雨災害による鬼怒川の氾濫の時のアンケート調査結果です。
この調査結果を見ると、川の水位が上がったことの情報入手手段としては、「特に得ていない」と「川の様子を直接見に行った」に次いで「テレビ」が多い結果となっています。
また、2020年1月にNTTドコモ モバイル社会研究所が実施した調査結果でも同様の結果となっており、災害発生場所・河川の状況・避難指示等の情報取得の手段としてはテレビが最多で69%だったという結果が出ています。年代別では、10代と20代はテレビよりもSNSが多い結果となっていますが、30代以上の世代になるとテレビがSNSを上回る結果となっています。
- 現状としては、避難指示等の情報収集手段としてはテレビが多い。
- 特に30代以上の世代ではテレビから情報を得ており、年齢が上がるにつれてテレビの割合が増える。
洪水時の情報手段としてテレビをオススメできない理由
河川氾濫の恐れがある時にNHKをはじめとするテレビから情報を得ることはオススメできません。まずは、国土交通省の検討会レポートに記載された内容を紹介します。
住民が適切な避難行動をとるには、自分の事として切迫感を認識できることが必要であり、そのために、ローカル情報の充実と個人に応じた情報提供を充実することが必要である。
ブロードキャストと呼ばれる新聞・テレビ・ラジオというマスメディアは、大勢に同一の情報を広く発信することに秀でている。一方で、そのことが逆に個人への切迫感を弱める形になっている。そこで、災害が迫った時は、その地域のローカル情報を優先することが有効と考えられる。一方、ネットメディアや SNS は個人に特化した情報を提供することが得意である。
引用:住民自らの行動に結びつく水害・土砂災害ハザード・リスク情報共有プロジェクトレポート(国土交通省 平成30年12月)
確かに、テレビから流れる全体的な情報を見ているだけでは、自宅近くの河川がどんな状況になっているのかわからないなぁ。
実際に避難をする時に重要なのは、「どの川が氾濫すると自宅が浸水するのか」「その川の水位はどんな状況か」「自分の住む地域に避難指示等が出ているか」といったローカルな情報です。これらの情報を得る手段として、テレビ放送は不適です。
当然のことではありますが、テレビの災害報道で”あなた”だけに特化した情報を提供してくれることはありません。”あなた”に特化した情報は、あなた自身で探しに行くしかありません。避難は受け身ではなく、自ら行動することが何よりも大切です。洪水時の情報手段としてテレビをオススメできない理由は、受け身の情報になるからです。
- 災害のリスクが高まり避難が必要な時に重要なのは”マス”の情報ではなく、”ローカル”な情報である。
- 新聞やテレビ、ラジオといったマスメディアは大勢に同一の情報を発信する媒体であり、ローカルな情報を提供することに不向きである。
- 避難は受け身ではなく能動的に情報を収集しなければならない。そういった意味でも、受け身の情報であるテレビ放送は情報取集手段としては不向きである。
最良の情報収集手段
最良の情報収集手段は、”あなた”に特化したローカルな情報を正確かつリアルタイムに取得できる手段です。それは結局、情報の出し手から、直接情報を得ることです。
私たちは多くの場合、情報の出し手から直接ではなく、マスメディアを介して情報を取得します。しかし、マスメディアを介することでローカルな情報ではなくなり、また情報の正確性やリアルタイム性も失われる可能性も否定できません。
河川氾濫の場合は、国土交通省が提供している川の防災情報というサイトと、気象庁が提供するキキクルというサイトの両方を確認することが最良になります。川の防災情報をインターネットで開くと、以下の画面が表示されます。
このページから、降雨の状況や河川の水位観測所毎のリアルタイムの水位情報、市町村から発令されている避難情報などを確認することができます。なお水位観測所は全ての河川に設置されているわけではなく、基本的に比較的規模の大きい河川(洪水予報河川と水位周知河川)にのみ設置されています。規模の小さい河川の危険度の高まりを把握するために使うのが、気象庁が提供するキキクルというサイトです。
災害のリスクが高まってきた時には、これらページを定期的に確認することで、状況悪化の進展状況も確認することができ、「そろそろ避難指示がでそうだな」ということもわかり、避難に向けた事前の準備もできるようになります。
繰り返しになりますが、事前に避難を行うためには、受け身で情報を取得するのではなく、自ら能動的に情報を取得しに行くことがなにより重要です。普段から川の防災情報やキキクルの見方を勉強しておき、いざという時に必要な情報を入手できるようにしておきましょう。
- マスメディアを介すると、情報のローカル性が失われてしまう。
- ローカルな情報を正確かつリアルタイムに入手するためには、情報の出し手の情報にアクセスすることが最良。
- 河川氾濫に関する情報であれば、国土交通省が提供している川の防災情報と気象庁が提供しているキキクルが最良。
- 川の防災情報では、降雨状況や水位観測所毎のリアルタイムの水位データ、市町村の避難指示発令状況などが確認できる。なお、川の防災情報の水位データは比較的規模の大きい河川に限定されていることが多いため、規模の小さい河川はキキクルで状況を確認する。
まとめ
災害のリスクが高まった時に自分の命を守るのは、最終的には自分しかいません。自分の命にかかわる以上、避難に関する情報は自分で取得しに行くことが何より重要です。
避難をする際、私たちに必要な情報はローカルな情報です。具体的には、「どの川が氾濫すると自宅が浸水するのか」「その川の水位はどんな状況か」「自分の住む地域に避難指示等が出ているか」といった情報です。NHKをはじめとしたテレビ等のマスメディアは、大勢に対して同一の情報を提供することに長けている手段ですので、マスメディアから情報を得るのは決して良い手段とは言えません。
ローカルな情報を得るためには、情報の出し手の情報にアクセスすることが有効であり、河川氾濫であれば国土交通省が提供している川の防災情報と、気象庁が提供するキキクルというサイトの両方を確認することが最良になります。
なお、当然ながらテレビをはじめとしたマスメディアもローカルの情報提供に弱いことは認識しており、個人に届くように様々な工夫をしています。例えば、テレビのデータ放送において、各地域の河川の防災情報(水位・雨量)を分かりやすくリアルタイムで確認ができるようになってきています。ですが、結局は情報の出し手にアクセスし、必要な情報を自分で取捨選択して確認することが最良の選択であることは変わりません。自分の命に係わることだからこそ、自分で必要な情報を取捨選択できる知識を身に着けておくようにしましょう。
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