【タワーマンションの災害リスク】水害による浸水リスクと購入時の確認事項(武蔵小杉の事例から)

風水害対策
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俺はタワマンの上層階に住んでるから、水害が来ても全く問題ないよ。

大手が手掛けたタワマンだから浸水対策も万全でしょ。

でも、2019年の台風19号では、JR武蔵小杉駅前のタワマンが浸水して大変なことになってたよ。あそこは確か大手が手掛けたタワマンで比較的新しいタワマンだったと記憶してるけど。

2019年に発生した台風19号による大雨の影響で、JR武蔵小杉駅前にあるタワーマンションが内水氾濫により浸水して停電が発生し、マンションのエレベーターや給水設備等のライフラインが一定期間使用不能となり、大きなニュースとなりました。これにより、タワーマンションの災害リスクが明らかとなりました。

日本の防災対策は、地震と比較して浸水対策は不十分であることが多いのが現状です。この記事では具体的にどういった点が不十分なのかを解説します。

この記事を読んでわかること
  • タワマン浸水事例で、事前に浸水被害の想定が難しかった理由
  • タワーマンションの浸水によるリスク
  • タワーマンション購入時に確認すべきこと
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はじめに~危険な場所に住むから危険性があるという事実~

ニューヨークは「犯罪が多く怖い処か」とニューヨーク育ちの米国人教授に聞くと、日本の男子は自ら危ない横道に入るから怖い目にあう。五番街をまっすぐ歩いていて、危ないことはないと断言する。

引用:防災関連調査研究の戦略的推進WG資料(内閣府)

自然災害により甚大な被害が生じるのはなぜでしょうか。それは、”危険な場所に住んでいるから”です。

東日本大震災で津波により甚大な被害が生じたのは、過去に大津波を経験していたにも関わらず年が経つことで忘れ去られ、人々は再び海岸に住むようになったためです。千葉県を中心に液状化をしたのは、脆弱な土地を開発したことが根本です。また、近年頻繁に発生する河川氾濫による被害は、川の氾濫域とわかっていながら町を作ったことにより発生しています。

この記事でテーマにしている2019年台風19号による武蔵小杉の事例も、多摩川の氾濫域に都市を作ったことが根本的な問題です。その上で、武蔵小杉のタワーマンションの被災概要から説明します。

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武蔵小杉のタワーマンションの被災概要

出典:建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン(国交省・経産省)

被災概要

2019年10月12日、台風19号による大雨で多摩川の水位が上昇しました。多摩川の氾濫はありませんでしたが、武蔵小杉駅周辺では内水氾濫が発生し、一部のマンションで浸水被害が発生しました。

浸水被害を受けた建物のうち、パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー(地上47階、地下3階)では、エントランス付近の開口部に住民が土嚢を積むことでエントランスからの浸水は防止できましたが、地下配管経由での流入により貯水槽が溢れ、地下3階部分が浸水しました。

出典:パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー「台風 19 号被災原因調査及び再発防止策検討状況の報告」

これにより、高圧受変電設備を含む多くの設備が故障し、停電が発生しました。停電により、給排水やエレベーター、機械式駐車場、排水ポンプなどが長時間動作を停止し、居住環境に大きな支障を与えました。

事前に浸水被害を想定することはできなかったのか

この武蔵小杉の浸水被害の事例について、事前に浸水を想定しておくことはできなかったのか、という疑問が湧いてくると思います。結論から言うと、事前に想定することは可能でした。ですが、この事例では浸水被害を想定することができていませんでした。ここでは、その理由を解説します。

現在公開されているハザードマップ等の情報

まず最初に、現在公開されているハザードマップやその他の情報を基に、この場所で想定されている浸水リスクを調べていきます。

この場所の地形を調べると、この場所は「氾濫平野」であることがわかります。「氾濫平野」は、洪水で運ばれた砂や泥などが河川周辺に堆積したりすることでできている土地で、地形的にもこの場所は河川の氾濫に注意が必要であると言えます。

出典:ハザードマップポータルサイト

次にハザードマップ(浸水想定区域図)を確認します。

今回発生した内水氾濫については、2021年に川崎市より内水氾濫ハザードマップが公表されていますので、2019年時点では内水氾濫を想定するのは難しかったかもしれません。ちなみに、2021年に公表された内水氾濫ハザードマップは以下の図の通りで、当該箇所は20㎝程度の浸水が想定されています。

内水氾濫ハザードマップ(川崎市)
出典:川崎市HP

また、多摩川の洪水を想定した多摩川洪水浸水想定区域は2016年に公表されており、それを見ると、当該箇所は最大浸水深は1.59m想定されています。また、当該箇所で浸水が継続する時間は、場所によってばらつきはありますが、長いところで2週間~4週間未満となっていました。

当該箇所の浸水深
出典:地点別浸水シミュレーション検索システム(浸水ナビ)
当該箇所の浸水継続時間
出典:ハザードマップポータルサイト
現在、この場所で想定されている浸水リスク
  • 地形より当該箇所は氾濫平野であり、河川氾濫のリスクが高い場所である
  • 内水氾濫により20㎝程度の浸水が想定される
  • 多摩川の氾濫により、最大浸水深1.6m、最大浸水継続時間4週間程度が想定されている。

事前に浸水被害を想定することができなかった理由

事前に浸水被害を想定することは可能でしたが、残念ながら今回は浸水被害を想定できていませんでした。その理由を解説していきます。

まず、このタワマンが建設された当時は、現在公表されている多摩川洪水浸水想定区域や内水氾濫ハザードマップはまだ公表されていなかったため、ハザードマップから直接的に浸水リスクを把握することは難しかったと言えます。

一方で、地形や河川の知識がある人であれば、当該箇所は地形が「氾濫平野」であること、多摩川がすぐ近くを流れていることを踏まえると、多摩川の氾濫水が到達する可能性があることはわかったはずです。もしそのことに気付いていれば、変電設備等は地下ではなく地上に設置する選択をしていたものと思います。

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タワーマンションの浸水によるリスク

出典:大規模水害対策に関する専門調査会(内閣府)

武蔵小杉のタワーマンションの浸水被害の事例から、タワーマンションの浸水リスクが浮き彫りとなりました。そのことを具体的に解説していきます。

リスク①:停電

タワーマンションに限ったことではありませんが、変電設備や非常用電源は地震対策として多くの場合は低層階に設置されています。上層階にこういった重量の大きい設備を設置すると建物が揺れやすくなり、耐震性能の確保が難しくなるためです。一方で、これらの設備が低層階に設置されれば、当然浸水に対しては脆弱となります。

特に、今回の事例のように、ハザードマップが公表される以前に建設されたタワーマンションは浸水が想定されていないため、多くの場合、こういった設備が低層階に設置されています。

そういった場合には、武蔵小杉の事例と同様に、ひとたび浸水すれば非常用電源までもが使えなくなり、停電することになります。

リスク②:上下水道の停止

停電によってさまざまなことが引き起こされますが、上下水道が停止することは大きなリスクとなります。武蔵小杉の浸水被害でも実際に発生しましたが、飲み水が確保できなくなることに加え、下水道が使えないためトイレを使うこともできなくなります。この状態が長時間継続すれば、生活は極めて困難となります。

リスク③:エレベーターの停止

タワーマンション特有のリスクとしてエレベーターの停止があります。停電が発生すると、当然ながらエレベーターは動かなくなります。武蔵小杉で被災したタワーマンションは47階建てでしたが、エレベーターが停止してしまうと、階段で昇り降りをするしかなくなります。しかしながら、47階の部屋まで昇り降りすることは当然ながら現実的ではありません。

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タワーマンション購入時に確認すべきこと

タワーマンションを購入する時には、こういったリスクがあることを十分に認識し、事前に浸水リスクを確認しておくことが必要です。以下では、タワーマンションを購入する時に確認すべきことを解説します。

確認事項①:浸水深を把握し、それに対する対策が行われているか確認する

まずは行政が公表しているハザードマップや浸水想定区域図、地形分類図などを用いて、その場所の浸水リスクを把握し、もし浸水が想定されている場合は、その場所で何メートルの浸水が想定されているのかを把握しましょう。浸水が発生する災害としては、洪水や内水氾濫、高潮氾濫、津波があり、それぞれの災害毎にハザードマップや浸水想定区域図が公表されています。それぞれの災害の概要は以下の記事で解説していますので、わからない方はこちらも併せてご覧ください。

想定されている浸水深がわかったら、タワーマンションがその浸水深に対して対策がきちんと行われているかを確認しましょう。例えば、建物自体の浸水対策は行われているか、変電機器や非常用発電機の浸水対策が行われているか、給水や排水のポンプの浸水対策は行われているか、エレベーターの浸水対策は行われているかなどが考えられます。これらの対策がきちんと行われていれば、浸水を過度に恐れる必要はなくなります。

確認事項②:浸水が継続する期間を把握し、それに対する対策が行われているか確認する

次に、浸水が想定されている場合は、浸水が継続する時間を確認しましょう。浸水が継続する時間は河川管理者等が公表している浸水想定区域図などから確認することができます。こちらも、洪水や内水氾濫、高潮氾濫といった災害種別毎に公表されていますので、全て確認するようにしましょう。

確認が出来たら、その浸水継続時間に対して、タワーマンションの対策がきちんとされているか確認しましょう。例えば、浸水が3日継続する想定になっているのに、非常用発電の燃料が1日分しかないということになると、その浸水対策は十分とは言えません。

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おわりに~まとめ~

この記事ではタワーマンションについて記載しましたが、上で記載した停電等のリスクは、実はタワーマンションに限った話ではありません。通常の集合住宅でも十分に起きうる話です。そのため、タワーマンションに限らず、今後引っ越しをする、あるいは住宅を購入する場合は、タワーマンションに限らずこの記事が参考になると思います。是非この記事を参考にしていただき、被災するリスクを可能な限り下げていただければと考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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